『核』その恐怖・・・いつ暴発してもおかしくない現実

1961年に国連総会でジョン・F・ケネディ大統領が演説を行いました。この演説から2年後の11月22日にケネディ大統領はテキサス州ダラスで、空港から市内へ向けてのオープンカーでのパレード中に狙撃され、世界中に衝撃を与えました。国連総会での演説が、世界へ向けてのメッセージもしくは遺言のようになってしまいましたが、ドキュメンタリー映画【カウントダウンZERO】では、その演説の中にあった『核』がメインテーマになっています。

『カウントダウンZERO』のテーマ

アメリカ合衆国第35代大統領のジョン・F・ケネディ大統領は、1961年の国連総会の中で演説していますが演説の中で語った言葉をご紹介しましょう。

“Today, every inhabitant of this planet must contemplate the day when this planet may no longer be habitable.(今日、地球のすべての住人たちは、いずれこの星が居住に適さなくなってしまう可能性に思いをはせるべきでしょう。

Every man, woman and child lives under a nuclear sword of Damocles,(老若男女というあらゆる人が、核というダモクレスの剣の下で暮らしています) hanging by the slenderest of threads, capable of being cut at any moment by accident or miscalculation or by madness(世にもか細い糸でつるされたその剣は、事故かまた誤算か狂気によって、いつ切れても不思議はないのです)”

「ダモクレスの剣」“The Sword of Damocles”は、常に戦々恐々としている状況をあらわす例えとしてヨーロッパなどで使われていますが、ケネディ大統領もまさにダモクレスの剣の故事を逸話にして「核」について語りました。いつ切れてもおかしくない・・つまり世界も常に「核」という危険にいかにさらされいるか。ということをテーマに製作されたドキュメンタリー映画です。

映画の内容

ドキュメンタリー映画なので、登場人物はすべて実際の報道の際に撮影されたものが使用されていたり、インタビューなどになっています。地球温暖化の危機をとなえたドキュメンタリ映画【不都合な果実】ではアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞に輝きましたが、おなじ製作陣が【カウントダウンZERO】では、核兵器廃絶を実際のニュース映像を取り入れながら、元CIA工作員や核を保有している国の専門家などが、核兵器の材料になる高濃縮ウランの実態を明らかにしているほか、実際に1961年に起こった事件についても証言がされます。

物理学者たちは、わずかグレープフルーツぐらいの大きさの高濃縮ウランを手にするだけで、テロリストでも簡単に核兵器を製造できることを指摘します。なぜなら、核兵器は核物質のなかでも特にシンプルな形態をしているからです。

一方で核兵器を保有するアメリカからは、第39代大統領のジミー・カーターがそして現在ロシアですが、当時はソビエト連邦共産党書記長だったミハイル・ゴルバチョフといった首脳が、数分で核兵器を発射することができるという実情を語ります。

世界は核軍縮へと動く

2010年4月8日にチェコの首都プラハで、アメリカのバラク・オバマ大統領と、ロシアのメドベージェフ大統領が「新核軍縮条約」に調印しました。それは「核兵器廃絶を目指す決意を確信をもって表明する」というものでした。

その内容は、アメリカとロシアの両国の戦略核弾頭の配備数をそれぞれ1550発に制限することなどになっています。新核軍縮条約では、アメリカロシアという両国議会の批准を経て発効となり、有効期間は10年間そして条約が発効してから7年間で削減合意を履行します。

なぜ今、世界は動き出したのでしょう。現在世界中にある核兵器は、およそ約23000もの核兵器があります。

1991年に調印した第一次戦略兵器削減条約を引き継ぐ形でオバマ大統領は次のように述べます。「約20年間で最も包括的な軍縮合意だ」ということです。実際にアメリカとロシアは、世界の核兵器の実に95パーセントを保有しているからです。世界の核兵器の大部分を保有しているアメリカとロシアが協調して、核削減の決意を示したことに歴史的な意義があるといえるでしょう。このことで、オバマ政権は【核なき世界】構想を具体化する第一歩を歩き出したともいえるでしょう。

そしてオバマ大統領とメドベージェフ大統領がプラハ城で会談した後に、新核軍縮条約に調印しました。オバマ大統領はこの調印について「核安全保障と不拡散そして、アメリカロシアの関係にとってもひじょうに重要な節目」だとして、成果を強調する一方でさらに進んだ戦術核や未配備になっている核弾頭を削減することに関しても、ロシアとの交渉を行いたいという意欲を示しました。

ロシアのメドベージェフ大統領は、この条約調印でロシアとアメリカの両国の関係が、「新たな1ページを開く」と評価しました。ところが、ロシアサイドはこの条約に調印するにあたって、「核軍縮合意は、アメリカのミサイル防衛計画が質的・量的に増強されない限り有効である」とした声明を発表したことで、アメリカサイドを牽制しました。ロシアのメドベージェフ大統領そしてアメリカのオバマ大統領両首脳が、ミサイル防衛計画の協力についてこれからも協議を拡大していくことで一致をして、これから先核兵器の削減についてあらたな一歩を踏み出しましたがその一方では、別の知られざる恐怖が迫っていることが明らかになります。

新たな核の恐怖

元CIA工作員のバレリー・プレイム・ウィルソンが「アルカイダが核兵器を入手して使用している」ということを述べて警告を発しています。そしてそれだけではなく、1990年代のロシアでは高濃縮ウランよりもジャガイモの方がより厳重に管理されていたといいます。

狂気:madness

日本で数千人の負傷者と死者を出した地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教は、密かにソ連から核弾頭の購入を計画していたことが判明しました。その価格は1500万ドルです。2011年9月11日に、アメリカで発生したアメリカ同時多発テロ事件では航空機がハイジャックされ、8時46分に世界貿易センタービル・ツインタワーの北棟にアメリカン航空11便が突入、9時3分におなじく世界貿易センタービル南棟にユナイテッド航空175便が突入して、飛行機は爆発炎上。ユナイテッド航空が突入した際には、アメリカン航空が突入した後だったこともあり、テレビ中継が行われていたまさにその時に発生したため、世界各国に飛行機が突入するという衝撃の映像が流れました。

このアメリカ同時多発テロを実行したのは、アルカイダですがテロ行為のターゲットとしているのはアメリカで、400万人のアメリカ人を殺害することを目的にしていますが、アメリカ同時多発テロのように、飛行機をビルに激突させても400万人を殺害することができません。そこで彼らが手に入れたいものこそが、核兵器なのです。高濃縮ウランを手に入れれば、中東にあるどの港からも海外へ送り出せることができてしまいます。

実際に驚くべき事件が1990年代初めのロシア海軍基地でおこりました。ロシアの海軍基地に高濃縮ウランが保管されていることを知った民間人が、誰にも見つかることなくロシア海軍基地へ侵入して、高濃縮ウランが保管されている建物の南京錠まで外したこともありました。もしそれがテロリストの手に渡ってしまったら、いったいどんなことが起きてしまうのか容易に想像できます。実際に今この時も、核兵器の材料になる高濃縮ウランが密輸されようとしているかもしれません。

それだけではありません。核兵器の発射コードを記している資料が、杜撰なことに置き忘れられてしまっていたり、発射コードの暗証番号がゼロにリセットされていたり・・・人類を簡単に滅ぼすことができる核が、あまりにも粗末に扱われていることが明らかになっています。

事故:accidents

深刻な事故も1961年に発生しています。戦闘機が空中分解したため2つの核弾頭がそのため落下してしまいました。落ちた2つの核弾頭のうちのひとつはパラシュートが正常に機能したため、パラシュートが開きましたが、もうひとつの核弾頭のパラシュートは開きませんでした。その時には6つの安全装置のうち5つの安全装置が故障していましたが、なんとかかろうじて爆発を免れたのです。いつなんどきこのようなアクシデントは二度と起こらないと断言できません。

以前アメリカではオーロラを調査するために、ロケットを発射しました。もちろん、オーロラ調査を目的としてのロケット発射ということを事前にロシア政府に通達していますが、その情報が上層部に伝達されていませんでした。

アメリカがロケットを発射したことを知り、ロシアでは軍部と上層部を含めた、軍事会議が開かれました。そしてその時には核発射ボタンまで開かれています。そして「我々は攻撃下にある」とまでいったのです。ミハイル・ゴルバチョフ元ソビエト連邦共和党書記長や、ジミー・カーター元大統領が語るとおり、わずか数分で核兵器を発射できてしまう実情が語られます。

まさに「核」とは悪魔の力のようなものです。核兵器がテニスボールほどのわずかな小さな核爆弾でマンハッタンを吹き飛ばしてしまうことができるからです。

核兵器ゼロへ向けて

『カウントダウンZERO』のラストでは核兵器ゼロへ向けて、「今そこにある地球の危機」として核の完全廃絶が最善ではないか?!と観客に問いかけてきます。核兵器のゼロを望み、核兵器はいらない。核兵器はないほうがよい。そして核兵器はゼロでいい。といろいろな人たちの口を通じて語られていきます。

冷戦が終了して、世界を取り巻く環境が大きく変わりました。核を保有する大国のアメリカとロシアでは核軍縮の機運が高まっていますが、その一方でずさんな核の管理によってロシアやアメリカ、イギリスなどの大国以外にも核兵器保有国が拡散しています。そして恐るべきことは、テロリストへ高濃縮ウランが渡ることです。テロリストたちには、国際的な条約は通用しないどころか、人類に関する倫理観にも縛られていないので、テロリストの手に核兵器や高濃縮ウランが手に渡ると地球はそして人類はいったいどのような道を辿ってしまうのでしょうか。

ジョン・F・ケネディ大統領は1961年9月25日の国連演説で「The weapons of war must be abolished before they abolish us.:戦争兵器を滅ぼすべきです。我々が滅ぼされる前に」という言葉の通りに、まさにゼロになるのは人類でしょうか。それとも核でしょうか。

核のおそろしさ

    ドキュメンタリー映画『カウントダウンZERO』と、核開発の歴史を考える